「コミュニケーション課題」を解決するために、なんとなくイメージはあるけれど、目指す方向性が分からない…など、お悩みの方必見。
これまで多くの大企業におけるコミュニケーション課題を解決へ導いてきたドリーム・アーツが、実際のお客さま事例をもとに「コミュニケーション改善」におけるポイントを解説していきます。

社内コミュニケーションを考える上で欠かせない「社内ポータル」という存在。実は、検討するうえで考える・押さえるべきポイントが数多く存在します。


今回は、日立物流様でのポータル導入事例をもとに解説していきます!

日立物流が「InsuiteX」で挑んだ社内ポータルの再構築

日立物流が「InsuiteX」で挑んだ
社内ポータルの再構築

「必要な情報にたどりつけない」ストレスが生産性向上の障害になっていた日立物流。全社員の意識を合わせ働き方を変えるための基盤を実現したポータルデザインプロジェクトとは?

コミュニケーション改善におけるポイント要約

  • 業界課題/社内課題を見極めと、それらの課題解決へ向け共に進んでいけるパートナーの存在が重要
  • システム要件よりも「なにを実現したいのか」をベースに検討していくこと
  • プロジェクトメンバーの選出方法でプロジェクトの成功は左右される
  • モノ作りとコト起こし 両方の側面から形作ること
  • スムーズな運用開始には事前の入念な準備と演出が必要
  • 全社ポータルの成功がポータルの成長・利用拡大につながる
平井

コミュニケーション改善にはいくつかポイントがあるんですね。
日立物流様のポータル導入プロジェクトのときは、どう進めていたのですか?当時担当していた栗木さんのお話を聞かせてください!

栗木

そうか、平井さんは日立物流様のプロジェクトには関わっていなかったか。ではまず、導入前にあった課題から解説していきます。

導入前の課題

業界を取り巻く課題

日立物流様を取り巻く環境は近年大きな変化を迎えていました。大きくは「労働人口の減少」「顧客ニーズの多様化」「3PL市場の競争激化」「デジタル化・テクノロジーの進化」などが挙げられ、これらの変化に対応し早急に変革を進めていくことが求められていました。

栗木

上記であげた物流業界を取り巻く課題ですが、実は他業界でも広く起きていることでもあるのです。

平井

なるほど。決して、物流業界だから発生している課題ではなく、さまざまな業種に当てはまる環境の変化といえるのですね。

社内での課題

①組織の面

社会全体が「Society5.0」(※)を掲げるなか、アナログ業務が多く残っており非効率な業務は労働問題や人手不足にもつながっていました。
※「Society5.0」とは、テクノロジーを活用して日本を未来社会へ導く取り組みのこと。

当時、日立製作所・SGホールディングスの持分法適用関連会社となったことから、自力での組織改革の必要性も高まりました。

また、社内アンケートを実施した結果「組織階層によって経営メッセージの伝達度が異なること」が判明し、上層部もそれを実感していきました。

平井

現場側・本社側双方において人材確保の難しさについては、多くの企業が頭を悩ませているテーマですね。

栗木

お客さまや社員から選ばれるためには、会社としての独自色を作り、それを中心に組織力を強化することが重要です。

平井

当時、プロジェクトメンバーのみなさんは外部環境の変化を感じて、新たな手法やメッセージの発信に取り組んでいたのですね。

平井

ですが、あまり社員に伝わっていなかったということが社内アンケートの結果分かった、と。

栗木

外部環境が不安定だからこそ、経営メッセージが社内全体に明確に伝わったうえで舵取りのできる柔軟性・俊敏さがこれまで以上に重要になっていきます。

平井

昨今の新型コロナウイルスによる状況が、まさに当てはまる気がします。

栗木

そうですね。置かれている状況をもとにした的確な判断と、対応のスピード感が重要であることは世の中全体が痛感したことでしょう。

②システム面

従来の社内イントラ掲示板は、コンテンツ掲載やポータル運営における明確なルールがなく情報が錯乱しており、重要情報の見逃しが多発するなど情報共有基盤として十分に機能していませんでした。
また、「掲示板を見に行く」習慣が定着しておらず、情報伝達手段はメールに依存。そのうえ業務に必要な情報が探しづらく、情報入手方法も属人化しており非効率。実施した「社内情報共有に関するアンケート」では、半数以上が不満を抱えていると回答しています。

さらに、生産性向上に向けた動きが十分に進まないなか、時短を進めることで管理職など一部の業務担当者にかかる負担が増えていきました。

栗木

「メール依存」もよく耳にするワードですが、これはそもそもポータル運用の整理がされていないためにメールにしわ寄せがいった結果で、間違った逃げ道になってしまいます。

平井

メールにおいてもきちんとルール化・整理がされたうえで運用することが重要ですね。

栗木

そうですね。ただ、そのような企業はほとんどないといえるでしょう。

平井

それはなぜでしょう?

栗木

ポータルとメール・チャットなどそれぞれのツールに適した使い方を考える必要がありますが、ここにおいてミッションをもっている人は社内にいないことが多いのが現状です。

平井

なるほど。

栗木

今回のケースでいっても、運用ルールのない世界で自由に情報の保管・やり取りを展開してきた結果が、実施した社内アンケートの結果に反映されているといえます。

検討開始

導入の目的

日立物流様では、当時抱えていたさまざまな課題を現場と本社で切り分け、それぞれで解決に向けた取り組みを推進しており、新ポータルの検討は「オフィス勤務者の生産性向上」を目指し進められました。
そこで、そもそも社内の非効率がどこにあるのかを調査した結果、テクノロジーの導入による解消とグランドデザインを描くことで解決できるのではないか、と方向性を定めていきます。
ドリーム・アーツもここで機会をいただき提案をさせていただいたのですが、結果としてすでに他社製品によるポータル構築がされていること、かつグループ内で進める方が総合的にみてもスムーズではないか、と選考から外れてしまったのです。

平井

こうした課題の解決手段として、社内アンケートを集めることはよく見られますね。

栗木

そうですね。課題の本質を見極めるための材料として必要ではあります。しかし、解決へ向けて共に進んでいくことのできるパートナーが居なければ、そもそも解決の道筋が見えてこず、宝の持ち腐れとなってしまうのです。

平井

ここはポータル検討において躓きやすいポイントのひとつといえそうですね。

検討におけるターニングポイント

当初、すでに構築されていた他社製品によるポータルでこと足りるのでは、と考えられていましたが段々と雲行きが怪しくなっていきます。アイデアとしてさまざまな意見がプロジェクトメンバーから出てきているなかで、それらを具現化することが難しかったのです。
ここで、あらためてドリーム・アーツにお声がけいただき私たちは本格的に、共にプロジェクトを進めていくこととなりました。

今回の検討は、もともと中期経営計画と関連づいたものであることから、検討オーナーは経営戦略部でした。ドリーム・アーツが本格的に参入し、まずは実現したいイメージの認識合わせを進め、あえてシステム部を巻き込まずに動いていきました。現状のポータル範囲で考えないことを念頭に進めたことが大きな成果を生んだのです。

平井

検討のオーナーが経営戦略部というのは、珍しい気がします。

栗木

こうしたシステム検討を進める際、どうしてもシステム要件ありきで進めてしまいがちですが、昔ながらの「システム部がまとめるべき」という考え方は“落とし穴”といっていいでしょう。

平井

なるほど。システム部しか考えられない・まとめられない、という固定概念は無くすべきですね。ユーザー目線と実現イメージが先にあるべき。

栗木

まずは「なにを実現したいか」をベースにストーリーを考え、検討チームが中心となって進めていったことが今回の成功要因のひとつです。

導入プロジェクト開始

プロジェクトを始める前に

こうしたプロジェクトにおいて、共に取り組むメンバーと、その集め方がとても重要ですが、メンバーを集める前に、社内の関心を高めておくことこそ、最も重要です。
日立物流様では、早い段階からポータルが変わることをポジティブな取り組みとともに社内報で周知していました。

それらの取り組みに感化・共感してくれたメンバーが部署横断で集まり、いよいよ導入プロジェクトが動き出していきます。

平井

「変化」することを「ポジティブ」な取り組みとともに知らせる、というのが重要ですね。

栗木

そうです。そのうえで、情熱をもって取り組んでいくことのできるメンバーを集める、【知らせる】→【集める】の流れがとても重要です。

平井

ポータルの構築・運用を考えることは、会社の未来を考えることに通じてきますから、そこに情熱をかけられる人でないと難しいのですね。

栗木

そのとおりです。
こうした取り組みに、自ら想いを持って案化するメンバーの存在がプロジェクトの成功を大きく左右します。

ドリーム・アーツ流プロジェクトのススメ

日立物流様の「InsuiteX」によるポータル構築は、2019年7月にスタートしました。所属も役職も異なる約20名でプロジェクトチームを組織し、全10回のワークショップを通じてデザインを固めていきました。

プロジェクトの事務局を務める経営戦略部 部長補佐の佐々木直美氏は

デザインのプロセスでは、プロトタイプをベースにプロジェクト会議で議論をし、完成度を高めていくというアジャイル的な手法で構築を進めました。要件として出てきた、外部サービスとの複雑な連携についても、ドリーム・アーツとIT戦略本部のメンバーとの間で丁寧に調整と対応をしてもらえ、納得できるポータルができあがったと思います

と振り返る。石山氏も、当時を振り返って以下のように語っている。

ドリーム・アーツとの作業には、われわれのやりたいことを大事にしながら、一緒にポータルを形にしていく“協創”の良さを強く感じました。プロジェクトチーム内でも 『せっかくみんなで考え、一緒に作ったポータルなのだから、積極的に使っていこう』 という意識が芽生えたように感じます。これは、今後ポータルを広く展開していく上でもプラスに働くでしょう

ポータル構築・導入においては一般的なシステム導入の手法をとっても上手くいきません。
ドリーム・アーツでは、

①チームビルディング
②ポータルデザイン
③テストマーケティング
④プロモーション
⑤効果測定

といったステップを設け、順に進めていくことを推奨しています。
モノ作り、コト起こしの両方の側面から形作っていくことを目的として上記ステップを設けていて、全社ポータルの導入においてはこうした専用の進め方が必要になります。

平井

モノ作りとコト起こしの両面から形作っていく、というのが特徴的ですね。

栗木

いわゆる「コト起こし」は静的なものではありません。
コミュニケーション改善、ならびに全社ポータルの構築は、ひいては「組織を変える」ことへつながります。

平井

これは、1人の社員が単独行動で成し遂げられるものでは到底ありませんね。

栗木

そうです。
同じ情熱と想いをもったメンバーが集まって初めて、本懐を果たすことができるといえます。

日立物流様ご講演「Climbers 2021-秋-」

日立物流様ご講演「Climbers 2021-秋-」

約1万名が利用するポータルの導入プロジェクトを部門横断でどのように推進したのか。プロジェクトの事務局を務める経営戦略部 佐々木様の熱いご講演をぜひ動画でご覧ください。

運用開始

開始当初

新しいツールを導入する際、事前準備は非常に重要です。
日立物流様では、運用開始の3か月前から準備と社内報での告知を進めていきました。
そのなかで、どれだけ便利に変わるのかといった話や、社内で実施したトライアル結果も紹介し、新しい全社ポータルに対するポジティブな印象を高められるような内容を発信していきます。
さらに1か月前になると、全拠点向けに新ポータルのコンセプトや利用方法についての紹介を丁寧に展開し、しっかりと立ち上げを進めていきました。
こうした事前準備を丁寧に整えていった結果、大きな混乱もなく、運用開始当初からポジティブな反応を受けとることができたのです。

平井

運用開始後もスムーズに進められるかどうかは、事前の準備と演出にかかっているのですね。

栗木

特に全社員が使う業務の入り口となるポータルにおいては、事前のアナウンスもなく運用が開始されてしまうとパニックに陥り、業務支障が起きうるものです。

平井

先のセクションでもあったように、事前のアナウンスやポジティブな予告が重要になりますね。

栗木

さらに言えば、実務的な支障をきたすことを避けるため、一定期間旧ポータルを残しておく、といった対策も必要です。

平井

今回のケースでいうと、丁寧な事前準備とバックアップ策との組み合わせにより、トラブルの発生を未然に防ぐことが出来たといえますね。

課題への対応

実際に運用が開始されると、利用においてユーザーが迷うことや製品に対するリクエストなどが発生してきます。そのため、あらかじめ社内対応用の想定問答集を用意し、新ポータルに掲載していました。
ほかにも、問い合わせ場所を事前に決めておくこと、チャットボットの用意など、想定しうる混乱・課題に対して先回りしておいたことで、運用開始後も大きな課題に見舞われることなく進めることができていました。

平井

事前にユーザーからのリクエストや質問などを想定して準備しておくことも大事ですね。

栗木

ただし、ある程度事前に想定した対処をとっていても、運用チーム/ドリーム・アーツ双方が気付いていなかった課題や懸念、さまざまな問題は少なからず出てくるものです。

平井

なるほど。

栗木

こうした課題は、継続して開催している定例会にて都度確認と対処をおこないます。ドリーム・アーツでは、リリース後も運用がある程度安定するまでは定例会を続けながらしっかりフォローしていきます。

平井

運用開始後も定期的に相談できる場があると安心ですね。

さいごに
-ポータルの成長・利用拡大を狙うために-

ポータル導入において一番に考えなくてはならないこと、それは全社ポータルの成功です。
プロジェクトメンバーの選出や、使い手である社員のみなさんがベストだと思うデザイン、より活用が進むような運用の検討、利用開始にあたっての演出…。すべては、全社ポータルの立ち上げにおいて確実に成功させるための準備なのです。
これが一度、良いモデルケースとして出来上がれば、その先にはグループ会社への展開や、部門ごとで期待するポータルの相談をもらったり、全社ポータルの使い勝手がいいからこそ、自ずと利用拡大をしたい、という声が社内からあがってくるのです。
だからこそ、はじめ多少の手間をかけても全社ポータルをきちんと作ることに注力すべきであり、これこそがポータル導入を成功させる秘訣です。



「InsuiteX」はトップメッセージや会社の方針を社員に理解してもらうための基盤としてはもちろん、部門と部門の連携業務の土台となる「付加価値連鎖」ポータル、各部門がコア業務に注力するための「事業部コア」ポータルとしてもご利用いただけます。
今回ご紹介した日立物流様をはじめ、三菱UFJモルガンスタンレー証券様、アシックス様など多くの企業様が、弊社と一緒に社内ポータルサイトを活用して社内コミュニケーション改善に成功されています。
各社の成功事例はこちらよりご覧ください。

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