社内ポータルサイトの作り方 後編
運用設計で良質なコンテンツを発信し続ける「仕組み」づくり
社内コミュニケーションを最適化できる「社内ポータルサイトの作り方(プロジェクト体制・推進方法)」を、前・中・後編にわけ解説しています。
前編から中編にかけて、プロジェクト成功につながる、体制づくりからプロモーションに至るまでの具体的な導入ステップ紹介しました。後編は「協創プロジェクト」における「運用設計」をテーマに、システム運営に関する実践方法についてお伝えします。
社内ポータルサイトの作り方前編:成功に導く「協創プロジェクト」とは >
社内ポータルサイトの作り方中編:「協創プロジェクト」に最適な導入ステップとは >
運用設計の流れ
社内ポータルサイトの運用において、効果的に継続するためには良質なコンテンツを発信し続ける「仕組み」が重要となります。この「仕組み」として「コンテンツ制作の体制」と「良質なコンテンツを効果的に発信するためのシステム設計」の2軸について「運用設計」のフェーズとして解説します。
運用設計は、以下のように「全体デザインの決定」を起点にいくつかのフェーズがあります。
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【1】全体デザインの決定
ポータルの全体デザイン決定後、具体的な運用設計に入ります。タイミングが早すぎると決める内容が定まらず、遅すぎると運用に乗るか判断が遅くなるので、全体デザインができた時点から運用設計を始めるのがおすすめです。
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【2】部分ポートレットの決定
全体デザインを決めた後に、部分を構成するポートレットを決定します。見た目の外観を決定しそれに相応しい機能を決定します。これを一つずつ決めていき、全体と部分の集合体として具体的なポータルデザイン設計が完成します。
※ポートレットとは、ポータルサイト内に特定の機能や情報を配置できる部品です。
ポートレット部品の詳細はこちら -
【3】ポートレットの掲載内容の決定
次に個々のポートレットの表現方法を決めます。テキスト情報なのか、画像を出すのか、数値で表現するかなど、元データの性質と外観で表現したい形とを折り合わせていきます。同時に内容種類を決め、データ連携をして自動更新されるものなのか、誰かのつぶやきとして発信されるものなのか、定義を進めます。
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【4】掲載内容の運用の決定
ここまでくると全体ポータルデザイン、部分ポートレットの内容が固まるので、いよいよそれを掲載・管理する担当部門の決定に移ります。経営企画なのか、営業なのか、どの部門がその内容への責任部門として相応しいか決め、掲載の頻度も想定を立てます。ここは社内調整が発生し、実際の責任部門に今後の運用に関する相談をしつつ決定していきます。
ポイントは、この段階を見越してポータルデザインプロジェクトの段階から、今後の運用に関わる主要な部門からの参画を想定しておくことです。デザインが決まった後で突然声をかけても、その部門からすると寝耳に水でNOを返される可能性が高まるため、始めから仲間として巻き込んでおくことが重要になります。
責任部門が決まったら、それぞれの掲載内容の起案から掲載までの流れを決定します。ライターが書いた途端に公開するつぶやき系なのか、事前承認を経て公開をする公式メッセージなのか、流れを考えるとそれに必要な機能が見えてきます。
運用体制をつくる
ポータルサイトの構築は、継続的に運用できる体制があるかが肝になります。ポータルサイトを構築をする際には必ず「事務局」もしくは「コミュニケーション委員会」を立ち上げます。これはポータルサイトに関わらず全社の情報とコミュニケーションの管制塔となるチームとして、経営企画、人事、広報、ITなどから部門横断のメンバーで構成します。そうです、ポータルデザインプロジェクトのメンバーがほぼこの顔ぶれに該当するので、主要なメンバーは一緒に作った想いとともに事務局メンバーに着任してもらうよう調整し促します。
前述の運用設計の方針は事務局メンバーが企画して、社内の公式運用ポリシーとして定めます。
事務局の立ち位置は管制塔、企画チームとして振る舞い、実際の書き手はそれぞれのポートレット、コンテンツに応じた担当者=ライターが担当します。こうやってポータルの内容がきちんと運用に乗るための全体体制を描きます。
コミュニケーションツールの使い分け方針を決める
情報管理・共有をおこなう階層によって、適切なツールは異なります。
また、情報は「ストック」と「フロー」の2種類があり、それぞれ集約する場所として適したツールは異なります。「ストック情報」とは「情報を資産として蓄積して活用していくもの」で、「フロー情報」はその場限りの「瞬間的に活用されるもの」です。
情報の種類に加え、コミュニケーションの階層によっても適切なツールは異なります。
ほとんどの企業がMicrosoft 365かGoogle Workspaceのどちらかを使っている状況があり、それに加えてInsuiteXなどのポータル製品を選ぶとなると、必ず用途と機能のバッティングが起きます。たいていの場合、Microsoft 365を入れる際に運用ポリシーまで整備するケースはないのですが、私たちはポータル導入時に社内全体のツールの用途と機能の使い分けの大方針を作ります。
この図では
- 全グループ横断は全社ポータルを軸に情報共有がされること
- 各社・各本部・各部はポータルを軸に置いたコミュニケーションに寄せること
従って、全社の重要方針はグループポータルに掲載され、チャットやメールで飛んでくることはない、というツールの使い分けが全社に浸透させたいポイントです。
大雑把すぎるかのようですが、この粗さのポリシーも定まっていない会社が大多数であり、全社向けの大方針としてはこのぐらいの粒度がちょうど良いです。
ポータル毎に掲載するコンテンツを住み分ける
次に、会社のマネジメントに関わる情報をポータルに掲載するとして、どのポータルにどのタイプの情報を載せるのか、ポータル間の住み分けを考えます。
さらにはポータル内容の重複がないように、コンテンツごとの住み分けも整理しておきます。
以下では、情報共有の範囲に合わせたポータルの種類を紹介しています。
画面イメージも掲載しているので、ぜひご覧ください。
運用設計とはここまで詳しく設計し、全社の情報とコミュニケーションポリシーとして継続的な運用を回す土台を作っていくことです。関係する部門も多く、調整も多岐におよび、時間がかかります。だからこそ、プロジェクト立ち上げの段階での経営キーマンや関係してくる部門のキーマンの巻き込みが重要であり、後から漢方薬のようにじわじわ効いてくるのです。
プロジェクト立ち上げの段階での経営キーマンや関係してくる部門のキーマンの巻き込みについてはこちらで紹介しています。
「社内ポータルサイト」構築プロジェクト成功のカギは、フォーメーションにあり
社内コミュニケーションを最適化できる「社内ポータルサイトの作り方」を、3回に分けて解説してきましたが、いかがだったでしょうか?社内ポータルサイトの構築や、見直しを考えている方にとって参考になれば嬉しいです。
社内ポータルサイトの作り方前編:成功に導く「協創プロジェクト」とは >
社内ポータルサイトの作り方中編:「協創プロジェクト」に最適な導入ステップとは >
【参考資料】社内コミュニケーション大解剖 セミナー動画を公開中
日立物流さまが実際におこなったコミュニケーション改革の事例を交え、社内コミュニケーション改善における秘訣からツールまで徹底解説!社内コミュニケーションに課題をお持ちの方、必見です。
執筆者
栗木 楽(くりき らく)
株式会社ドリーム・アーツ 協創パートナー推進本部 副本部長
大企業コミュニケーションのReデザインを得意とし、数万人の企業のコミュニケーション改革プロジェクトの推進役を多数経験。お客さまプロジェクトではさまざまな部門からの多彩なメンバーと一緒に、部門間・階層間のタコツボ化解消に真正面から取り組んでいる。日本企業の底力を上げるために、実践知を活かして組織開発とITの融合でアプローチする。